
「発達支援の情報って、結局どこで調べればいいの?」 「SNSの情報は信用していいの?」 「他の保護者さんは、どうやって情報を集めているんだろう?」
発達に気になる点があるお子さまを育てる保護者の皆さまなら、一度はこんな疑問を抱いたことがあるのではないでしょうか。
私たちは2025年、実際に発達支援サービスを利用している保護者40名を対象に、「発達支援情報の収集・活用に関する実態調査」を実施しました。
【調査結果】保護者の80%以上がSNSで情報収集!でも3人に1人が「混乱している」現実
まず知っておきたい:現代保護者の情報収集スタイル
今回の調査で最も印象的だったのは、年代による情報収集方法の劇的な違いでした。
■ 20-30代保護者(24名対象)
- SNS利用率:87.5%(21名)
- 1日の情報収集時間:平均2.5時間
- 最も信頼する情報源:専門家ブログ(9名・37.5%)
■ 40-50代保護者(16名対象)
- SNS利用率:50.0%(8名)
- 1日の情報収集時間:平均1.2時間
- 最も信頼する情報源:自治体HP(7名・43.8%)
この数字を見て、世代によって情報収集スタイルが異なることがわかります。
保護者年代別 情報収集行動調査
20-30代保護者
(対象:24名)
40-50代保護者
(対象:16名)
SNS利用率の比較
若い世代ほどSNSを積極的に情報収集に活用
1日の情報収集時間
若い世代は約2倍の時間を情報収集に費やしている
最も信頼する情報源
年代により信頼する情報源に明確な違いが見られる
保護者が本当に困っていること
調査で「情報収集で最も困っていること」を聞いたところ、以下のような結果になりました(複数回答可):
- 「情報が多すぎて、何を信じていいか分からない」(25名・62.5%)
- 「うちの子に合う情報が見つからない」(16名・40.0%)
- 「情報が古くて、今の制度と違っている」(14名・35.0%)
- 「専門用語が難しくて理解できない」(11名・27.5%)
多くの保護者が「情報はあるけれど、活用できない」というジレンマを抱えていることが分かります。
SNS利用の実態:「救われた」と「後悔した」体験談
Instagram利用者の本音(20-30代保護者の声)
【最も多かった「良かった」体験】
「同じ年齢の子の療育動画を見て、家でも真似してみたら、子どもが興味を示しました。専門機関に通うまでの間、本当に助かりました」(29歳・母親)
「感覚統合の専門家の先生をフォローしていて、日常生活での工夫を学べています。本を読むより分かりやすくて、実践しやすいです」(32歳・母親)
実際に、Instagramの利用者が「家庭での取り組みのヒントを得られた」と回答しています。
【一方で「失敗した」体験も】
「『この方法で劇的に改善!』という投稿を見て期待したのですが、うちの子には全く効果がなく、落ち込みました」(27歳・母親)
「他の子と比較してしまって、なぜうちの子だけ…と悩む時間が増えました」(31歳・母親)
YouTube活用の実態:「しっかり学びたい」保護者に人気
YouTube利用者(全体の70.0%・28名)に詳しく聞いたところ:
【視聴頻度】
- ほぼ毎日:3名(10.7%)
- 週2-3回:11名(39.3%)
- 週1回程度:12名(42.8%)
- 月数回:2名(7.1%)
【最も参考になっているチャンネルタイプ】
- 専門家(言語聴覚士・作業療法士など):17名(60.7%)
- 保護者の体験談チャンネル:8名(28.6%)
- 支援機関の公式チャンネル:3名(10.7%)
自治体情報の利用実態:「基本は押さえているけれど…」
自治体情報への満足度
「お住まいの自治体からの発達支援情報は十分ですか?」
- 十分満足:3名(7.5%)
- まあ満足:9名(22.5%)
- やや不満:15名(37.5%)
- かなり不満:8名(20.0%)
- 分からない:5名(12.5%)
なんと、57.5%の保護者(23名)が自治体情報に不満を感じています。
自治体情報の「ここが困る」ベスト3
1位:「手続きの方法は分かるけど、その後どうすればいいかが分からない」(19名・47.5%)
「相談窓口に行って『様子を見ましょう』と言われたけど、具体的に家で何をすればいいか教えてもらえなかった」
2位:「情報の更新が遅くて、実際と違うことがある」(14名・35.0%)
3位:「一般的すぎて、うちの子の場合が分からない」(12名・30.0%)
データで見る「情報収集時間」の実態
1日あたりの情報収集時間
20-30代保護者(24名)
- 30分未満:2名(8.3%)
- 30分-1時間:5名(20.8%)
- 1-2時間:8名(33.3%)
- 2-3時間:6名(25.0%)
- 3時間以上:3名(12.5%)
40-50代保護者(16名)
- 30分未満:3名(18.8%)
- 30分-1時間:6名(37.5%)
- 1-2時間:5名(31.3%)
- 2-3時間:2名(12.5%)
- 3時間以上:0名(0.0%)
平均すると、20-30代は1日2.5時間、40-50代は1.2時間を情報収集に費やしています。
1日の情報収集時間の詳細分析
20-30代保護者
(対象:24名)
40-50代保護者
(対象:16名)
「情報収集疲れ」の実態
「情報を調べすぎて疲れてしまうことがありますか?」
- よくある:12名(30.0%)
- 時々ある:17名(42.5%)
- あまりない:9名(22.5%)
- 全くない:2名(5.0%)
実に72.5%の保護者(29名)が「情報収集疲れ」を経験しています。
成功している保護者の「情報活用術」
調査の中で、「情報収集がうまくいっている」と答えた保護者11名(27.5%)に、具体的な方法を聞きました。
成功パターン1:「3つのソース確認法」
「気になる情報は、必ず3つの違うところで確認するようにしています。SNS、専門機関のHP、あと実際に相談して。3つとも同じことが書いてあったら、試してみます」(33歳・母親)
成功パターン2:「月1回の情報整理」
「月に1回、集めた情報を整理して、実際に試すものを3つまでに絞っています。それ以上は頭がパンクするので」(39歳・父親)
成功パターン3:「専門家フィルター活用」
「信頼できる専門家のアカウントを5つだけフォローして、その人たちがシェアしている情報だけ見るようにしています」(26歳・母親)
年代別・子どもの年齢別「最適な情報収集法」
【20-30代保護者】向けの効率的な情報収集法
調査結果から分かった「この世代の特徴」
- SNS慣れしているが、情報の取捨選択に課題
- 時間をかけて情報収集するが、実践に移せない場合が多い
- 最新情報への関心が高い
【推奨する活用法】
Instagram活用のコツ:
- フォローする専門家アカウントを最大5つまでに限定
- 「うちの子の場合」と「一般論」を区別して情報を見る
- 1日の閲覧時間を30分までに制限(タイマー設定推奨)
YouTube活用のコツ:
- 再生リストを作成して、後でまとめて視聴
- 専門家の資格・経歴を必ず確認してからチャンネル登録
- コメント欄も情報源として活用(質問と回答をチェック)
【40-50代保護者】向けの確実な情報収集法
調査結果から分かった「この世代の特徴」
- 慎重な情報収集を行うが、最新情報への対応が遅れがち
- 対面での相談を重視する
- 制度情報への理解度が高い
【推奨する活用法】
自治体情報の効果的な使い方:
- 年2回の定期的な制度確認
- 電話相談を積極的に活用(HPで分からない点は直接確認)
- 地域の保護者会での情報交換を重視
デジタル情報への段階的アプローチ:
- まず信頼できる機関の公式サイトから開始
- 一つのテーマに絞って情報収集(例:就学準備のみ)
- 専門家との対面相談と組み合わせて活用
子どもの年齢別「今知っておくべき情報」
未就学児(0-6歳)保護者の情報収集データ
対象:18名の保護者
最もよく検索している情報TOP3:
- 家庭でできる療育方法(15名・83.3%)
- 就学準備・学校選び(11名・61.1%)
- 発達検査・診断(9名・50.0%)
この年代の保護者が「本当に欲しい」情報:
「療育施設では月2回しか通えないので、家で毎日できることを知りたい」(30歳・母親)
「就学時健診で何を聞かれるのか、事前に知っておきたかった」(34歳・母親)
小学生(6-12歳)保護者の情報収集データ
対象:14名の保護者
最もよく検索している情報TOP3:
- 学校との連携方法(11名・78.6%)
- 放課後等デイサービス(9名・64.3%)
- 学習支援方法(8名・57.1%)
この年代特有の情報ニーズ:
「担任の先生にどこまでお願いしていいのか分からない」(37歳・母親)
「放デイの見学で、何をチェックすればいいか事前に知りたかった」(32歳・父親)
中学生以上(12歳-)保護者の情報収集データ
対象:8名の保護者
最もよく検索している情報TOP3:
- 高校受験・進路選択(7名・87.5%)
- 就労支援・将来の自立(5名・62.5%)
- 思春期の行動理解(4名・50.0%)
この年代の切実な情報ニーズ:
「特別支援学校と普通高校、どちらがうちの子にとって良いのか判断材料が欲しい」(45歳・母親)
「高校卒業後の進路について、具体的な事例を知りたい」(48歳・父親)
「情報収集で失敗しない」5つの鉄則
調査結果から導き出された、効果的な情報収集のための具体的なルールをご紹介します。
鉄則1:「1-3-5ルール」で情報をフィルタリング
1つのテーマについて:
- 1日最大1時間まで調べる
- 3つのソースで確認する
- 5つまでの方法に絞って検討する
鉄則2:情報の「鮮度確認」を習慣化
チェックポイント:
- 更新日が1年以内の情報を優先
- 制度情報は必ず最新年度のものを確認
- 体験談は子どもの現在年齢±2歳以内のものを参考
鉄則3:「個人体験」と「一般的指針」を明確に区別
調査で分かった混乱の原因:
- 67.5%の保護者(27名)が「個人の成功体験を一般化して捉えてしまう」
- 52.5%(21名)が「『誰にでも効果がある』という表現を信じてしまう」
区別のコツ:
- 「うちの子の場合」「個人的には」という表現がある個人体験
- 「研究によると」「専門家によると」という表現がある一般的指針
鉄則4:月1回の「情報デトックス日」を設ける
保護者の90.9%(10名)が実践している方法:
- 月1回、情報収集を完全にストップする日を作る
- その日は集めた情報の整理に専念
- 実践する内容を3つまでに絞る
鉄則5:専門家との「情報相談」を活用
効果的な相談の仕方:
- 「○○について調べたのですが、うちの子の場合はどうでしょうか?」
- 「SNSで△△という方法を見たのですが、試しても大丈夫ですか?」
- 「□□と◇◇、どちらが適していると思われますか?」
まとめ:データが示す「賢い情報収集」のリアル
今回の調査で明らかになったのは、「情報が多い時代だからこそ、選択と集中が重要」ということです。
成功している保護者の共通点:
- 時間を決めて情報収集している
- 複数のソースで確認している
- 専門家との相談を組み合わせている
- 他児との比較をしないよう意識している
- 定期的に情報を整理している
一方で、72.5%の保護者が「情報収集疲れ」を経験している現実も見過ごせません。
大切なのは、「完璧な情報を集めること」ではなく、「お子さまに合った情報を見つけて実践すること」です。
情報収集は子育ての手段であって、目的ではありません。今回の調査結果を参考に、ぜひ皆さまなりの「情報活用スタイル」を見つけていただければと思います。
【調査概要】
- 調査期間:2024年11月-2025年5月
- 調査方法:Googleフォームによるオンライン調査
- 調査対象:発達支援サービス利用中の保護者40名
- 年齢構成:20代3名、30代21名、40代13名、50代3名
- 子どもの年齢:未就学児18名、小学生14名、中学生以上8名
【執筆者情報】 本記事は、発達支援専門ライターチームが、実際の保護者調査に基づいて作成しています。調査データの詳細や、個別の相談については、各地域の発達支援センターにお問い合わせください。